cybercitynukeyork437 2008-03-04
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この音はどうやって出しているのだろうか。
これは明らかにスピーカーが吹っ飛ぶ寸前という音である。
全く信じられないぐらい破壊的な音である。
おそらく録音中に何回かスピーカーが爆発しているだろう。
このアルバムの録音は1973年である。
この時代にはロック・コンサートなどでは電圧や機材の中を流れる
電流量のコントロールがまだまだ不安定で
突発的な過大入力が生じスピーカーが実によく吹っ飛んだのである。
レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ブラック・サバス
ザ・フーといった当時全盛を極めていた巨大な音量を売り物とする
バンドのコンサートでは比較的原始的なP.A.システムに流れ込む巨大な電流の
カオス的な作用によって日常茶飯事的にスピーカーが破壊されていた。
しかしそれらのバンドの音の歪み方は非常におとなしいものでそれでもスピーカーの爆発は
不可避だったのである。そもそもジミー・ペイジはファズ・ペダルを使っていなかった。
レス・ポールはギター・アンプにシールドを直結し、ヴォリューム・スイッチを全開にすると
極めて素晴らしい音がするのである。特に真空管アンプの場合はそうである。
しかし真空管は極めて急速に過熱状態になる。そこへ当時のいい加減な
ファズ・ペダルを使用したらどうなるかは言うまでもあるまい。
ファットなギター・サウンドを出すためにギター・アンプのヴォリューム・スイッチを
全開にし、同時にファズ・ペダルを使用することは音響技術担当のローディを
困らせるためにやっているようなものだった。
面白いのはジミ・ヘンドリックスが偶然ディストーション・サウンドというものを発見
したのは真空管の過熱により波形がズタズタになったためだったということだ。
ディストーション・サウンドは本来的にフィードバックの同類で音響技術者に
忌み嫌われる完全な招かれざる客だった。当時のロック・ミュージシャン達は
こぞってジミが偶然発見した歪んだ半雑音(当時はそう思われていた)を取り入れたが
現場の音響技術者達にとってディストーション・サウンドが悪夢であることに
変わりはなかった。
コンサートの始まりから終わりまで、いつスピーカーが吹っ飛ぶか、
いつ真空管が破裂するか、いつアンプからP.A.システムに至るあらゆる電気回路の
どこが焼け切れるかを考え続けるのは心臓に悪い。
いったんそうなればメンバーから叱責されコンサートは中断されるのである。
現在では音響増幅部への過大入力に頼るディストーション・サウンドは全く存在しない。
ギターを含めたすべての波形はディジタル化され、
音響に関する全情報がソフトウェアによって設計される。
ソフトウェアを走らせるのはラップトップ・コンピュータ一台で足りる。
ライブ・コンサートにおける音響機材のコントロールは全てソフトウェア・レベルで
行われ、コンピュータにも使用される高性能コンデンサによって
電圧や機材間を駆け巡る電流量は0.01パーセントも予測不可能な変化をしない。
然るにこの「ロウ・パワー」であるが、1973年当時の機材の状況から見てこの音は何だ。
ファズ・ペダルの使用は明白だが、明らかにスイッチのひねり過ぎである。
この音を完全に再現するライヴ・コンサートは当時不可能だったと思う。
このギター・サウンドは明らかにギター・アンプ自体の過熱に加えて
ファズ・ペダルからの過大入力によるものであるが
これをライヴ・コンサートでやるとスピーカーが爆発する。
性能の悪いファズからの過大入力があるからスピーカーのヴォリューム・スイッチを
回せない。ヴォリューム・スイッチを絞ると
ヴァン・ヘイレンのファースト・アルバムの様な音になるだろう
(あれはあれでロック史上に残る爆裂サウンドであることは間違いないが‥‥)。
まあ、そんな私ごときの御託はどうでも良い。とにかく
このアルバムに匹敵するほど滅茶苦茶なロック・サウンドと言われても
何も思いつかない。
MC5の「キック・アウト・ザ・ジャムズ」がちょっと似ているぐらいである。