厳しくも美しく燃え 2008-05-19
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あらゆる意味で音楽の完成度が高いこのアルバムを聴いて、1つの見解に達した。
和声的には、シンプルisベストと考えているのだと。この人のメロディは、この和声
進行があってこそ生きてくるのだ。
和声的な特徴として、音階固有の和音(例えばハ長調で言えば、音階ドレミファソラシ
の各音に、ドミソ、レファラ、ミソシ、ファラド、ソシレ、ラドミ…のように音階の音を
乗せて作られた和音)がかなりの割合を占めること。これは一見シンプルに聞こえるけれ
ど、それを逆に利用して、どこかに和声的に聞かせるポイントをうまく挿入する。
(このアルバムではないが)「愛のメロディ」で、主和音(曲で最も安定感のある和音)
を落としどころにしか使わない心憎さ。「dandelion」で、音階固有和音をタンポポの種の
ようにふわふわ浮かすように使うことで、曲想とまさにフィットする。その中にふっと現れ
る一瞬の転調(C7)は、イメージをかき立ててくれる。「大事なものは目蓋の裏」の一部分
にのみ現れるCminor〜G7 の天才的効果。
このアルバムで言えば、「ごめんね。」の何気に出てくるE♭。この和音が<ごめんね>と
いう歌詞の前に置かれ、ごめんねに感動を添える。それが中間部分で強調される、バランス
感覚。Follow the Nightingaleの即興的なスキャット部分のフラット系への転調。「私にで
きること」は和声的に”わざと”単純に分かりやすくすることで、地震の復興を目指す人々の
心にストレートに訴えかけている。希望を持ちましょうと言うためには、開けっぴろげな
明るさ(この曲のイ長調は明るさの象徴と言える)が必要だったということ。その他にも
和声感覚の鋭さは無数にあると言ってよい。
シンプルな和音を駆使しながら、今までに無いほど「クラシカル」にさえ聞こえてくる
大きな流れを持つ本作は、曲の力と、アレンジの力で、新たな方向性を見いだしたのでは
ないか。(クラシカルと書いた根拠として、「動機の統一(il mare dei suoniのサビと
everlastingのテーマ)」や「音程の統一(穏やかな静けさ、ごめんね。の完全5度音程)」
などの技法を駆使し、全体に統一感を図ったことも挙げられる。つまり、意識的にせよ無
意識的にせよ、音楽を知り尽くしている。)
今後も音楽に対する厳しい姿勢、妥協を許さない態度を貫き、一層幅広い音楽性を獲得し、
絶対に飛躍してほしいという願いをこめて、★6つ。